アメリカには大学レベルの授業を無償で提供するedXというオンライン授業プラットフォームがあり、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)、日本の京都大学などが参加しています。edxは大学レベルの授業を受けられるだけで単位は付与されないことになっているのですが、MITがedxの無料オンライン講座を受講した学生に単位を付与するパイロットプログラムを発表し話題を呼んでいます。
Online courses + time on campus = a new path to an MIT master’s degree | MIT News
http://news.mit.edu/2015/online-supply-chain-management-masters-mitx-micromasters-1007
SC1x Supply Chain Fundamentals: MITx MicroMaster's Credential in Supply Chain Management | edX
https://www.edx.org/course/sc1x-supply-chain-fundamentals-mitx-mitx-ctl-sc1x
発表されたプログラムは、物流システムに関連するマネジメント手法を学ぶサプライチェーン・マネジメントの修士課程で提供され、学生は同コースの前期分に値する無料講座をオンラインで受けて、その後に実施されるテストをパスすれば残りの単位をキャンパスでの授業で取得して修士学位をゲットできるというものです。最初から最後まで無料オンライン講座だけで修士学位をゲットできるわけではありませんが、インターネットを通じてサプライチェーン・マネジメントを学習したい世界中の人々に修士学位取得の機会が広がったというわけです。
このパイロットプログラムは2016年2月からスタートし、約40人の生徒の参加を受け付けるとのこと。MITのサプライチェーン・マネジメントはアメリカ国内でトップクラスに位置しているコースであり、学士を取得していったん就職した後に受講する学生が多く、生徒の平均年齢は約30歳で3~8年の社会経験を積んだ人がほとんどです。レベルの高い修士コースをオンラインで、前期のみですが無料で受けられるのは、高い授業料を払えなかった人たちに新しい扉を開くことになります。
MITの機械工学科のSarma教授は「今回のパイロットプログラムを通じて修士学位を取得できる授業形態は、高度な教育を受けるためには学校に通うことが必須であるという従来の型を打ち破れる可能性を秘めています。修士学位の取得方法を民主化したという感覚に近いものがあります」と、新しいタイプの授業形態の可能性について言及しました。
アメリカではMITの他に、アリゾナ州にあるフェニックス大学がインターネットの授業だけで学士や修士を取得できる社会人向けの「オンライン・キャンパス」を実施していたり、デューク大学がオンライン授業だけでMBA(経営管理学修士)を取得できるコースを提供していたり、通信教育で学位の取得を推し進める動きが活発になってきています。また、学位の取得はできないものの、前述のedxやGoogleやビルゲイツ財団が支援するカーンアカデミーといったオンライン教育プラットーフォームも注目を集めており、「学びたい」という熱意を持った人に与えられる選択肢がどんどん増えてきているようです。
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